東京に隕石落下という文字と巨大隕石を描いたサムネイル

更新:2026.08.01

もし、東京に
隕石が落ちたら?

東京駅付近に岩石質の隕石が落ちると仮定して、直径を10mから約9,000kmまで変えながら、被害の範囲と現象の違いを計算でたどります。

星宮メル
星宮メルお、ハルト来た! 今日は何のお話?
天城ハルト
天城ハルト隕石だ。東京に落ちたらどうなるか。
星宮メル
星宮メル隕石! わくわく〜! 映画で見たやつ! 火の玉がドーンってやつでしょ?
天城ハルト
天城ハルト大きさだけでは決まらない。空で砕けるのか、地面まで届くのか。順を追って見ていこう。
星宮メル
星宮メルえーっ? 大きさで決まらないの? なんか怖いこと言ってる……。
天城ハルト
天城ハルト怖がるためではない。スケールの感覚をつかむためだ。直径を変えながら、何がどう変わるかを見ていく。
CHAPTER 01 / 条件をそろえる

空で砕けるか、
地面まで届くか。

隕石は、ただの大きな石ではありません。材質、速さ、角度、大気の厚み、地面の性質が絡み合って、同じ直径でも結果は大きく変わってきます。まずは、その分かれ道を押さえておきましょう。

星宮メル
星宮メル東京に落ちる隕石って、大きさだけ決めればいいの?
天城ハルト
天城ハルト同じ50 mでも、もろい岩石なら空で砕け、緻密な鉄なら地面まで届く。今回は岩石質の標準的な仮定でそろえる。
星宮メル
星宮メル材質で変わるんだ。じゃあ、ほかにも決めることいっぱいあるってこと?
天城ハルト
天城ハルトああ。落下地点、突入する速さ、角度、地面の硬さ。これらを固定して、直径だけを動かす。
落下地点東京駅付近
天体岩石質・3,000 kg/m³
突入速度20 km/s
入射角45度
地盤岩盤相当・2,500 kg/m³
人口昼間曝露人口の幅
星宮メル
星宮メルえーっ、東京駅にするなんて! 人がいっぱいいる場所のほうが、すごいことになりそう?
天城ハルト
天城ハルトその通りだ。地図上の中心を固定して比較するためでもある。ただし実際の被害は、時刻と落下地点が数kmずれるだけで大きく変わる。
CHAPTER 02 / まずはエネルギー

直径が変わると、
エネルギーはどう変わる?

球形の岩石質天体と仮定すると、質量は密度×4/3πr³、運動エネルギーは1/2mv²で求められます。小さな天体は、このエネルギーの多くを大気に渡してしまうのです。

星宮メル
星宮メルわくわく〜! 直径が大きくなるほどエネルギーも大きくなるんでしょ?
天城ハルト
天城ハルトそうだが、増え方が直感よりずっと急だ。まずはデータを見よう。
星宮メル
星宮メルうそでしょ!? 10 mと1 kmって100倍のはずなのに、なんで結果がそんなに違うの?
天城ハルト
天城ハルト直径が10倍なら体積は10³、つまり1,000倍。速度をそろえるとエネルギーもほぼ1,000倍ずつ跳ね上がる。この先は数値が一段増えるだけでなく、起きる現象そのものが切り替わる。
直径質量突入前エネルギーモデル上の結末
10 m約1.57×10⁶ kg3.14×10¹⁴ J / 0.075 Mt高度約30.6 kmで空中爆発
50 m約1.96×10⁸ kg3.93×10¹⁶ J / 9.38 Mt高度約7.6 kmで空中爆発
200 m約1.26×10¹⁰ kg2.51×10¹⁸ J / 600 Mt最終クレーター直径 約3.54 km
1 km約1.57×10¹² kg3.14×10²⁰ J / 75,000 Mt最終クレーター直径 約15.6 km
5 km約1.96×10¹⁴ kg約9.38×10⁶ Mt地球規模の気候影響を考える領域
10 km約1.57×10¹⁵ kg約7.50×10⁷ Mtチクシュルーブ級に近い地球規模の衝突
100 km約1.57×10¹⁸ kg約7.50×10¹⁰ Mt生物圏を大きく組み替えうる概念比較
約9,000 km約1.15×10²⁴ kg約5.5×10¹⁶ Mt地球の重力結合エネルギーに迫る仮想衝突

この表を見ると、直径が1桁変わるたびにエネルギーは1,000倍ずつ増えていくことが分かります。それと同時に、現象そのものが「空で終わる」ものから「地面を砕く」ものへ、さらに「地球全体を揺るがす」ものへと変わっていくのです。

CHAPTER 03 / 過去の地球で起きたこと

過去の記録を、
比較の参考にする。

空中爆発の衝撃波も、地面をえぐったクレーターも、地球には実物が残っています。東京のケースを考えるとき、こうした過去の現象が有力な参考になります。

星宮メル
星宮メル50 m級って、映画の中だけの話じゃないよね……?
天城ハルト
天城ハルト1908年のツングースカは、50〜80 m級の天体が高度約10 kmで空中爆発した有力な例だ。10〜20 Mt級とされ、広い森林がなぎ倒された。ただし人の少ない地域だった。
星宮メル
星宮メルえーっ! 森がなぎ倒されたの!? 人がいないから助かったんでしょ?
天城ハルト
天城ハルトそうだ。同じことが東京の真上で起きれば、全く違う話になる。実例をいくつか並べておこう。
チェリャビンスク(2013年)では、家ほどの大きさの天体が上空で爆発しました。約440 kt TNT相当の衝撃波で窓が割れ、負傷の多くはガラス片によるものだったと言われています。
バリンジャー・クレーターは、約30〜50 mの鉄隕石が残した約1.2 km幅のクレーターです。材質の違いが、空中爆発に終わるか地表衝突に至るかを左右するのです。
星宮メル
星宮メル同じ50 mでも、東京の真上で爆発したら……全然ちがう話になっちゃうんだ。
天城ハルト
天城ハルトその通りだ。ツングースカの倒木面積をそのまま人口に掛けるのは乱暴だ。しかし「クレーターがなくても都市機能を壊せる」ことは、はっきり分かる。
CHAPTER 04 / 死傷者数の条件付き試算

都市に落ちると、
死傷者はどう試算される?

物理モデルが描き出すのは、火球、衝撃波、クレーターです。そこに東京の人口や建物を重ねていくと、現象が都市の出来事として立ち上がってきます。数字が、どんな前提から生まれるのかを確認しておきましょう。

星宮メル
星宮メルえーっ? じゃあ「死者数○万人」って、物理モデルがそのまま出してくれる数字じゃないの?
天城ハルト
天城ハルトふむ。屋内か屋外か、建物がどれだけ壊れるか、火災と救助がどうなるかで大きく動く。だから一点ではなく、前提を見える形にした幅で出す。
星宮メル
星宮メル数字を見てたら、急に東京の駅とか通学路とか浮かんじゃった……。これ、ただの数字じゃないんだね。
天城ハルト
天城ハルトそうだ。数字のうしろには、人がどこにいて、建物がどれだけ壊れるかという条件がある。だから一点ではなく、幅で考えるんだ。
帯域人口入力死亡率の感度帯傷害率の感度帯
5 psi以上深刻な爆風圏の昼間人口20〜85%15〜50%
1〜5 psi外縁の昼間人口0〜10%3〜20%
熱・破片・火災地表衝突ケースで追加規模ごとに上乗せ規模ごとに上乗せ

衝撃波の帯域に人口を重ねると、物理の数字は都市の被害へと姿を変えます。ここでは、同じ落下でも条件や時間帯で影響の広がりがどう変わるかを見ていきます。

CHAPTER 05 / 規模別に読む

8つの落下を、
規模ごとに比べる。

10 mから1 kmまでは、東京と関東を範囲とする地図で読めます。5 kmを超えると、食料・気候・海洋を含む地球のシステムへと視点が移っていきます。100 kmと約9,000 kmは、隕石災害の範囲を超えた、惑星科学の概念比較です。

01

直径10 m:空で砕ける

高度約30.6 kmの空中爆発を想定

モデル上、10 mの岩石質天体は高高度で分解してしまいます。中心から100 mでも過圧は0.081〜0.163 psiにとどまり、深刻な建物被害圏は生じません。火球、ソニックブーム、そして観測上の驚きが、主な出来事になります。

星宮メル
星宮メルえーっ? 10 mでも地面に穴が開くとは限らないの? 空のほうが先に派手なことになるんだ……!
天城ハルト
天城ハルト高高度でほどけた天体は、地上から見ると火球と衝撃波の現象になる。チェリャビンスクを思い出すと分かりやすい。
10 m級隕石の被害範囲を示す図
被害範囲図: 地上の深刻な爆風圏は置かない。
10 m級隕石の空中爆発を示す図
空中爆発図: エネルギーの大半を大気へ渡す。
空中爆発高度約30.6 km
最大過圧(100 m)0.081〜0.163 psi
クレーター形成しない
条件付き死傷者試算
死亡0人を基本
負傷0〜数十人

この入力では深刻な爆風圏を置きません。破片の落下、窓ガラス、偶発事故は別モデルが必要で、広い死傷者数には変換しません。

02

直径50 m:東京の上空で起こる大規模空中爆発

高度約7.6 kmで約8.26 Mt TNT相当を大気へ放出

20 km地点で2.84〜5.68 psi、50 km地点で0.81 psi。5 psiの境界は約20 km、1 psiの境界は約45〜50 kmと読めます。クレーターはできなくても、爆風とガラス破損の範囲は首都圏一帯に広がっていくのです。

星宮メル
星宮メルツングースカくらいなら、東京のどこが一番やばいの?
天城ハルト
天城ハルト爆発の真下だけではない。半径20 kmの密集市街地に強い爆風が届く。離れた場所でも窓や外装、交通と通信の同時被害が問題になる。
星宮メル
星宮メルうそでしょ!? クレーターなしで半径20 kmに強い爆風? 地面に当たってないのに、広い範囲がやられちゃうの?
天城ハルト
天城ハルト大気へ渡ったエネルギーが、空気そのものを押すからだ。だから落下地点だけでは足りない。
50 m級隕石の被害範囲を示す図
被害範囲図: 5 psi圏 約20 km、1 psi圏 約45〜50 km。
50 m級隕石の空中爆発を示す図
空中爆発図: 上空で放出されたエネルギーが爆風になる。
空中爆発高度約7.6 km
5 psi圏半径 約20 km
昼間曝露人口1,400万〜1,800万人
条件付き死傷者試算
死亡約300万〜900万人
負傷約400万〜1,300万人

5 psi圏の死亡率20〜45%と、1〜5 psi圏の追加被害を感度帯で合算しています。空中爆発高度・建物性能・時間帯で、数字は大幅に動きます。

03

直径200 m:大気を抜け、地表へ届く

最終クレーター直径 約3.54 km、地震規模の揺れも伴う

200 mでは、破砕されながらも地表へ到達します。20 kmで13.2 psi、50 kmで2.43 psi。5 psiの境界は約35 km前後です。クレーター、火球、噴出物、爆風、地震動が、数秒から数分の時間差で次々と重なってきます。

星宮メル
星宮メルうわっ、ここからは空の爆発じゃなくて、地面そのものがえぐられちゃうんだ……。
天城ハルト
天城ハルトその通りだ。衝突点の近くはクレーターに含まれ、外では爆風に加えて噴出物や火災、道路・電力・病院の停止を考える必要がある。
星宮メル
星宮メルやばい……3.5 kmのクレーターって、東京駅のまわりが丸ごと地図から消えちゃうサイズだよね。
天城ハルト
天城ハルトその外側にも火球、噴出物、地震動が時間差で届く。ひとつの円ではなく、現象がいくつも重なって起きる。
200 m級隕石の被害範囲を示す図
被害範囲図: 5 psi圏は半径約35 km前後。
200 m級隕石の地表衝突を示す図
衝突図: 地表衝突、火球、噴出物を伴う。
最終クレーター直径 約3.54 km
地震規模(モデル)M 6.4
昼間曝露人口2,000万〜2,600万人
条件付き死傷者試算
死亡約800万〜1,900万人
負傷約500万〜1,500万人

5 psi圏の死亡率40〜65%に、外縁の爆風と熱・噴出物の追加被害を感度帯で合算しています。救助・医療の機能低下は未反映です。

04

直径1 km:東京の災害ではなく、関東の危機になる

最終クレーター直径 約15.6 km、エネルギーは約75,000 Mt TNT

東京駅付近そのものがクレーターに含まれる想定です。50 km地点で68.4 psi、100 km地点でも15.8 psi。5 psiの深刻な爆風圏は100 kmを大きく超え、関東全体のインフラ、医療、物流、避難先が同時に損なわれてしまいます。

星宮メル
星宮メル1 kmって、チクシュルーブほどじゃないけど……もう東京だけの話じゃないね。
天城ハルト
天城ハルトNASAも1 km級を国家規模を壊し得るサイズとして扱っている。チクシュルーブは10 kmを超える天体で、地球規模の環境変化につながった。ここはその10分の1でも、局地では十分に破局的だ。
星宮メル
星宮メル1 kmまで来ると、画面の縮尺を変えないと全体が入らないね! もう東京の地図じゃ足りない、関東まるごとだ。
天城ハルト
天城ハルトその感覚が大切だ。サイズが変わると、見るべき範囲も「街」から「地域」へ切り替わる。
1 km級隕石の被害範囲を示す図
被害範囲図: 5 psi圏は半径100 kmを超える。
1 km級隕石の地表衝突を示す図
衝突図: 広域の火球・噴出物・爆風を伴う。
最終クレーター直径 約15.6 km
地震規模(モデル)M 7.9
100 km地点の過圧15.8 psi
条件付き死傷者試算
死亡約2,500万〜3,600万人
負傷約600万〜1,300万人

半径100 km超の5 psi圏に4,000万人以上という人口入力を置いた感度分析です。実際には、範囲外への避難、火災、二次災害、広域支援不能が結果を左右します。

05

直径5 km:被害が日本を超え、供給網に及ぶ

エネルギーは約940万Mt TNT。問題は日射と食料に移る

5 km級では、衝突地点から離れた場所も無傷では済みません。岩石の蒸気、粉じん、噴出物が上空へ運ばれ、日射量と気温を変える可能性があるためです。港湾や工場の被害に加え、作付け、漁業、輸送、備蓄といった、時間単位の長い連鎖が前面に出ます。東京に落とす仮定とはいえ、もはや東京だけの災害では済まされません。

星宮メル
星宮メルここまで来ると、「どこが壊れたか」より、来年食べ物があるかを考えなきゃいけないんだね。
天城ハルト
天城ハルトそうだ。粉じんで日が届かなくなると、植物が育ちにくくなり、そこから食べ物の連鎖が揺らぐ。この規模からは、被害の中心より世界のつながりが問題になる。
5 km級隕石の日本周辺への影響を示す図
範囲図: 日本列島と太平洋まで、視野を広げる。
5 km級隕石の地球規模の噴出物を示す図
現象図: 上層大気に届く粉じんと噴出物が問題になる。
突入前エネルギー約940万Mt
主な論点日射・食料・物流
範囲日本から世界へ
死傷者を一つの帯域で数える意味が薄れる規模
直接被害に続いて、食料生産・燃料・医療・国際物流の同時低下が起こりえます。被害の規模は、衝突地点の人口より、社会が機能を保てる期間で決まってきます。
06

直径10 km:人類の存続を扱う規模

チクシュルーブ級に近い。地球の生態系全体が影響を受ける

約6600万年前のチクシュルーブ衝突は、直径約10 kmの天体が有力視され、白亜紀末の大量絶滅と結び付けられています。当時、人類はまだ存在しませんでした。そのため「同じことが起きれば人類が必ず滅びる」とは言えません。ただし、急激な寒冷化、光量低下、食物網の崩壊が重なれば、現代文明の維持、ひいては人類の生存圏が問われる規模になるのです。

10 km級隕石の地球規模の大気影響を示す図
範囲図: 大気と海洋を含む、地球規模の変化を考える。
10 km級隕石の地球への衝突を示す図
現象図: 衝突地点の爆発より、上層大気の粉じんが鍵になる。
突入前エネルギー約7,500万Mt
比較対象チクシュルーブ級
範囲地球の生態系
「人類滅亡」と断言できる数値ではない
これは、人類の存続が不確実になる条件を考えるための目安です。地域の直接被害、飢餓、感染症、移動、政治的な分断を別々に数えても足りません。生態系と食料供給の回復力が、長期的な結果を左右するのです。
07

直径100 km:地球の表面環境そのものが変わる

人類の被害より、地球環境の前提を考える規模

100 km級では、エネルギーは10 km級のさらに1,000倍に達します。直接の衝撃と火球に続き、大気に運ばれる粉じんや蒸気、海洋への影響が、気候を長く変えてしまいます。ここでは「東京に落ちる」という設定そのものが意味を失い、地球全体の光、熱、水、食料網をどう失うかが問題になってきます。

100 km級隕石による地球規模の大気変化を示す図
範囲図: 国境ではなく、生物圏を単位に見る。
100 km級隕石が地球に与える影響を示す図
現象図: 衝突点より、地球を巡る粉じんと熱が長期の鍵になる。
突入前エネルギー約750億Mt
主な論点大気・海洋・光量
範囲地球の生物圏
人類の活動は、地球環境の変化に従属する
人間社会を支える農地、漁場、淡水、輸送網は、表面環境が安定していることを前提としています。この規模では、被害を人数で合計するより前に、その前提そのものが失われることを考える必要があります。
08

約9,000 km:地球を維持できなくする衝突

これは隕石ではない。惑星に近い天体との仮想的な巨大衝突

地球を物理的にばらばらにする目安は、地球の重力結合エネルギー、約2.24×10³² Jです。岩石質の天体が20 km/sで衝突すると仮定すると、これに近いエネルギーを持つのは、直径およそ9,000 km、質量が地球の約2割に迫る天体になります。火星より大きく、もはや「小惑星落下」とは呼べません。

地球と惑星規模の衝突体を示す概念図
概念図: 惑星同士の衝突として、縮尺そのものが変わる。
巨大惑星衝突後の地球と破片円盤を示す概念図
現象図: 地表の被害ではなく、地球の再形成を考える規模。
概念上の衝突エネルギー約2.3×10³² J
比較対象重力結合エネルギー
結果地球の再形成
「人類滅亡」を超え、生命圏そのものが維持できない
この比較は、地球が完全に消えるという結果を保証するものではありません。衝突の角度、速度、両天体の構造で、破片円盤、再集積、溶融の割合は変わります。それでも、現在の地表環境と生態系が維持できないことは、エネルギーの桁から明らかです。
CHAPTER 06 / 衝突後の東京を読む

隕石の後、東京は
何から止まるか。

爆風の半径だけでは、都市の出来事は終わりません。移動が止まり、通信が混み、物流が経路を失い、仕事が場所を探し始めます。ここでは50 m級の空中爆発から200 m級の地表衝突までを想定し、都市活動の変化を時間順に見ていきます。

最初の15分
判断の前に止まるもの

鉄道・道路・エレベーター・工場は、揺れや通信断を受けて自動停止や安全確認に入ります。壊れた設備だけが問題ではありません。無事な区間も、情報が足りないために動かせなくなります。乗客や通勤者は駅、オフィス、道路に分散したまま、次の行動を待つことになります。

その日の午後
つながると届くが分かれる

データセンターや携帯基地局には非常電源がありますが、通信網は電力、光回線、燃料、保守要員の移動に支えられています。決済、予約、配車、在庫管理はオンラインで残っていても、人や物が届かなければ都市の機能は動きません。金融市場も、価格より前に、取引所・銀行・清算機関の業務継続が問われます。

数日から数週間
復旧より先に迂回が始まる

物流は港湾、幹線道路、倉庫を避ける代替ルートを探し、企業は拠点を分散し、働く場所を移し始めます。被害が中心部に集中するほど、工場より、発注・通関・配送・顧客対応といった結節点の損失が大きくなります。被災していない地域も、部品不足や人手の偏りを通して影響を受けるのです。

予測の扱い

経済損失を一つの金額にはまとめません。落下時刻、休業日か平日か、停電の長さ、代替拠点、避難範囲、国外との物流接続で桁が変わるためです。代わりに、被害が設備から活動へどう伝わるかを見ていきます。

人の視点

最初に必要なのは、正確な全体像よりも、家族と連絡が取れるか、今いる建物から出てよいか、どこで一晩過ごすかという、切実な判断です。

事業の視点

被災地の売上が止まるだけではありません。取引先、在庫、従業員、データ、決済が別々の場所で止まり、復旧の順番を組み替える必要が出てきます。

星宮メル
星宮メル東京って、建物が集まってるだけじゃなくて、電車も配送も、みんなつながって動いてるんだね。ひとつ止まると次も止まっちゃうの。
天城ハルト
天城ハルトそうだ。被害の中心から離れていても、都市に結ばれた仕事や生活は影響を受ける。だから復旧は、修理だけでなく、つなぎ直す作業になる。
CHAPTER 07 / 根拠と限界

数字の背景を、
確認しておく。

物理モデルの出力には、不確実性があります。数字の背景にある条件を確認したうえで読むと、結果の意味が変わってきます。ここでは、その前提を整理しておきます。

参照した主な根拠
  1. Earth Impact Effects Program:Marcus、Melosh、Collinsによる衝突効果計算。空気爆風、熱、クレーター、噴出物の概算に使用。
  2. NASA Asteroid Facts:10 m、50 m、140 m、1 km級の危険性、チェリャビンスク、ツングースカ、バリンジャー・クレーターの解説。
  3. NASA Earth Observatory: Tunguska:ツングースカの推定規模と空中爆発の記述。
  4. USGS: Impact mechanics at Meteor Crater:バリンジャー・クレーターのエネルギー推定。