シミュレーションの
条件と計算方法
シミュレーションを始める前に、4つの条件を決めておきます。金利・支払額・支払方式・借入額です。このうち3つを固定し、借入額だけを動かして、規模ごとに何が変わるかを見ていきます。
ここでは「手数料」を金利と同じ意味で使います。クレジットカードのリボ払いでは利息ではなく「利用残高×手数料率」で計算されますが、本記事では金利=手数料率として扱い、年率15.0%で統一しています。カード会社ごとの手数料率の違いは、CHAPTER 08で改めて触れます。
年利15%で
1年放置するとどうなる?
リボの仕組みに入る前に、金利そのものの重さを計算で感じておきましょう。年率15%というのは、1年間何も返さずに放置したとき、残高がどれだけ増えるかを示す数字です。
| 残高 | 年率15%の1年分の利息(目安) | 1ヶ月分(月利計算) |
|---|---|---|
| 10万円 | 約15,000円 | 約1,250円 |
| 50万円 | 約75,000円 | 約6,250円 |
| 100万円 | 約150,000円 | 約12,500円 |
| 300万円 | 約450,000円 | 約37,500円 |
注目したいのは最後の行です。残高300万円では、月々の利息だけで約37,500円になります。毎月1万円しか払わない設定だと、支払額が利息に届かず、残高は減るどころか増え続けます。これが「完済不能」の正体です。
リボ払いで
よくある3つの失敗例
数字だけでは伝わらないことがあります。消費者庁や国民生活センターが公表するリボ払いの相談事例には、似たような構造が繰り返し現れます。ここでは、公表情報を元にした匿名化された3つの典型パターンを並べてみました。
10万円をリボで
完済まで何ヶ月かかる?
具体的な数字で追ってみましょう。10万円を年率15%・毎月1万円のリボで支払った場合、完済まで何ヶ月かかり、利息はいくら積み重なるでしょうか。下の表は、月ごとの残高・利息・元金・累計利息を全行で示しています。
| 月 | 支払額 | 利息 | 元金充当 | 残高 | 累計利息 |
|---|
借入額ごとの
完済月数と利息を比較
同じ条件(年率15%・毎月1万円)で、借入額だけを5万・10万・30万・50万・100万・300万と変えてみます。規模が大きくなるほど、完済までの期間がどう伸び、利息がどう膨らむかを見ていきます。100万と300万では、完済そのものができなくなります。
借入5万円:最も早く終わる
小額なら利息の影響は限定的
5万円は、今回のスケールで最も小さな額です。毎月1万円という支払額に対して残高が小さいため、利息の割合も低く、数ヶ月で終わります。リボの「強さ」はまだ目立たない規模です。
借入10万円:利息が見え始める
完済は早いが、最初の支払の1割強は利息
10万円でも完済は早いです。ただ、毎月の1万円のうち最初は約1,250円が利息で引かれ、元金に充当されるのは残り約8,750円から始まります。額が小さいので問題はありませんが、この構造が額とともにどう膨らむかが、次のスケールの鍵になります。
借入30万円:期間が跳ね上がる
完済まで数十ヶ月、利息の総額が目立ち始める
30万円に達すると、完済までの期間が一気に伸びます。毎月1万円のうち利息に消える割合が大きくなり、元金がなかなか減りません。このあたりから、「毎月1万円」という設定が少し苦しくなってきます。
借入50万円:利息が支払額の過半を占める
毎月1万円のうち6割超が利息に
50万円では、毎月の利息が約6,250円になります。1万円の支払のうち6割以上が利息で消え、元金に回るのは3,750円ほどです。完済までの期間はさらに長引き、支払総額に占める利息の割合が目立ってきます。
借入100万円:完済できない
毎月の利息約12,500円が支払額1万円を超える
100万円では、毎月の利息が約12,500円になります。しかし支払額は1万円で固定されています。つまり毎月、利息の方が2,500円多くなり、その不足分が残高に加算され続けます。払っているのに、残高は増えていくのです。
借入300万円:利息が支払額の3倍を超える
毎月の利息約37,500円 vs 支払額1万円
300万円になると、毎月の利息は約37,500円に達します。支払額1万円では利息の4分の1しか払えず、残りの約27,500円が毎月残高に上乗せされます。1年で約33万円、残高が増え続ける状態になります。この設定では、完済は構造的に不可能です。
支払額を変えると
完済までどう変わる?
ここまで毎月1万円で固定してきました。では、同じ100万円を「毎月5千円」「1万円」「2万円」「5万円」で払った場合、完済までの期間と総返済額はどう変わるでしょうか。これが、リボから抜け出すための現実的な選択肢になります。
| 毎月支払額 | 完済まで | 総返済額 | 利息総額 | 結果 |
|---|
5千円は利息(約12,500円)に届かず完済不能、1万円も同様です。2万円で初めて完済可能になりますが、期間は長くなります。5万円まで上げると、期間も利息も一気に圧縮されます。つまり、リボで借金を終わらせるには「利息を上回る支払額」が必須で、それがどの額かを知ることが出発点になります。
なぜリボ払いは
残高が減りにくいのか
ここまでの数字から浮かぶ問いは一つ。なぜリボは、これほど残高を減らしにくいのでしょうか。答えは3つの要素の組み合わせにあります。それぞれを分解して見ていきます。
仕組み1
支払額は固定
リボの最大の特徴は、残高が変わっても毎月の支払額が一定なことです。10万でも100万でも、設定すれば毎月1万円。これは手軽さの源ですが、同時に「残高に応じた調整」を放棄していることを意味します。
仕組み2
利息が先に引かれる
毎月の支払額は、まず利息の支払に充てられ、残りが元金の返済に回ります。つまり利息が大きいほど、元金に回る分は小さくなります。残高が減らない理由は、ここにあります。
仕組み3
残高が減ると利息も減る
残高が減れば、次の月の利息も減ります。これは良い側面です。しかし減り方が緩やかなため、完済までの期間が長引き、その間じゅう利息が積み重なります。額が大きいと、この「緩やかな減少」が際立ちます。
固定支払・利息優先・緩やかな残高減少。この3つが重なると、元金がなかなか減らず、完済までの期間が伸び、その間の利息総額が膨らみます。額が大きいほど、この構造が鮮明に現れます。これが「リボの強さ」の正体です。
メリットの側面
毎月の負担が予測しやすく、一時的に収入が減った際の支払調整手段としては機能します。残高が小さければ、利息の影響も限定的です。
注意すべき側面
残高が大きいまま長期間放置すると、利息が積み重なり、最悪の場合は完済不能に陥ります。定期的に残高と完済見込みを確認し、必要なら支払額を見直すことが鍵になります。
計算の前提と
注意点まとめ
この記事の数字は、日本のカード会社が一般に採用する方式と金利を参考にした概念シミュレーションです。実際の契約条件とは一致しません。以下に、計算の前提と限界をまとめました。
- 金利計算は「月利=年率÷12」の近似を用いています。実際のカード会社では日割り計算(利用残高×年率÷365×日数)を採用することが多く、月ごとの金額はこの記事の数字と完全には一致しません。
- 実質年率は比較のため15.0%で統一しています。実際のリボ払いの手数料率は、カード会社や契約内容によって異なります。また、利息制限法により元本額に応じた上限(10万円未満は年20%、10万〜100万円未満は年18%、100万円以上は年15%)が定められています。
- 「完済不能」の判定は、月々の利息が支払額以上になった場合としています。実際には、カード会社が最低支払額を調整したり、残高スライド方式では支払額が段階的に変わるため、この記事の固定額モデルとは挙動が異なります。
- 消費者庁および国民生活センターが公表するリボ払いに関する相談事例・注意喚起を参考にしました。
この記事は教育目的の概念シミュレーションであり、特定の金融商品の推奨でも、個別の契約条件を示すものでもありません。実際の契約にあたっては、各カード会社の契約約款・手数料率を必ずご確認ください。